幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



「お前……こんなところで何してるんだ」


立ち尽くしていたら、部屋から出てきた総司に見つかってしまった。


ゆっくりそちらを振り返ると、総司は心配そうに眉を下げて近づいてくる。


「部屋に帰ろう」


さっきまで怒鳴っていたのが嘘みたいに、総司は優しくあたしの手を引いて部屋に戻った。


「なんて顔してるんだよ。まさか、悪い病気だったのか?」


あたしをベッドに座らせ、顔をのぞきこむ総司。


その大きな手のひらが、あたしの頬を包んだ。


「ううん……」


違うよ。悪い病気なんかじゃない。


平和な世なら、すごくすごく、おめでたいこと。


本当は嬉しくて泣きたいぐらいなのに、それができないのが悔しい。


「大丈夫」


今、総司にこのことを伝えることは、できない。


総司はあたしを、函館から脱出させようとするだろう。


そうしたら、もう会えないような気がする。