「お前……こんなところで何してるんだ」
立ち尽くしていたら、部屋から出てきた総司に見つかってしまった。
ゆっくりそちらを振り返ると、総司は心配そうに眉を下げて近づいてくる。
「部屋に帰ろう」
さっきまで怒鳴っていたのが嘘みたいに、総司は優しくあたしの手を引いて部屋に戻った。
「なんて顔してるんだよ。まさか、悪い病気だったのか?」
あたしをベッドに座らせ、顔をのぞきこむ総司。
その大きな手のひらが、あたしの頬を包んだ。
「ううん……」
違うよ。悪い病気なんかじゃない。
平和な世なら、すごくすごく、おめでたいこと。
本当は嬉しくて泣きたいぐらいなのに、それができないのが悔しい。
「大丈夫」
今、総司にこのことを伝えることは、できない。
総司はあたしを、函館から脱出させようとするだろう。
そうしたら、もう会えないような気がする。



