「言葉の通りだ。もうこれ以上犠牲を出さぬよう、総攻撃の前に白旗を上げよう」
総攻撃。
ぞくりと、背中に悪寒が走る。
総攻撃……それは、いよいよ新政府軍が函館の旧幕府軍の壊滅に乗り出すということ。
「反対だ!」
どん、と机を殴ったような音がした。
もちろん、そう怒鳴ったのは総司だ。
「しかし土方くん、こうも多勢に無勢では……」
「それがなんだ。そんなこと、とっくにわかっていたことじゃねえか。
俺たちには援軍もねえ。函館市民だって、味方になってくれない。
それでも俺たちは、ここまで戦ってきた」
「けれどここにきて、とうとうフランスにも見限られてしまった」
江戸幕府の頃からがっちり協力してくれていたフランス軍人たちが五稜郭を離れていったのは、つい先日のこと。
たしかに、フランスが手を引いてしまったことで、味方内の絶望的雰囲気が濃くなってしまったことは本当だろう。
「それでも!俺たちは最後の徳川家臣として、この戦に命をかけるべきだろう!」
総司の興奮した怒鳴り声が響く。
相手はどうやら、榎本総裁ひとりみたい。



