「だって、あたし、ずっと戦場にいて……」
夜通し銃をぶっ放してたりしてたのに、お腹の中はびくともしなかった。
もっと痛くなったりとか、出血したりしてもおかしくないのに。
驚きと混乱で、ドキドキと心臓が高鳴る。
まさか……まさか、総司の子が、あたしの中に……。
「楓、早く函館から出るんだ!」
「えっ」
「ここは近いうちに戦場になるんだろ?あたしたちも、ご主人と一緒にロシアに逃亡しようと思って準備していたところなんだ」
函館が戦場になる……。
たしかに、新政府軍がこのまま黙っているわけがない。
近いうちに函館は攻撃を受けるだろう。
「このまま戦闘を続けるなんて、身重のあんたには無理だ。旦那と一緒に、なんとか函館を脱出しろよ」
槐はまるで自分のことのように、切羽詰まった表情であたしに語りかける。
心配してくれてるんだ……。
「子供に何かあったら、絶対後悔するぞ」
「うん……」
まだ、実感がわかない。
まさか、自分が母になるなんて。



