しかし……。
戦闘がひと段落したとき、悪い知らせがもたらされた。
松前も木古内も兵力増強した新政府軍に落とされ、五稜郭へ退却してしまったという。
「そんなあ!あたしたちは勝ってたのに!」
大鳥さんも榎本さんも何をしてるんだか!
……と、総司が風の力を使ったことは棚に上げて味方を責めても仕方ない。
「このままじゃ、ここだけ挟み撃ちにされちまう。仕方ねえ……退却だ」
総司は兵士たちに退却命令を出す。
その背中は冷静で淡々としているようだけど、本当は悔しくて仕方ないに違いない。
だって、勝っているのに退却しなきゃならないなんて。
武士のこの人にとって、どれだけの無念だろう。
あたしはまた、胸が苦しくなるのを感じた。
こうして旧幕府軍はすべての防衛拠点を捨てて、五稜郭へ集結。
4月中には、函館以外の蝦夷地は、新政府軍に征圧されてしまった。
もう、あとがない……。
五稜郭には、旧幕府軍の滅亡を予感した不穏な空気が立ち込めていた。



