「楓、手伝ってくれないか」
翌日の夜、あたしは偵察から帰ってきた総司に呼び出された。
先日の戦の疲れがとれなくて、体中がだるい。
けど、二股口で守備を続ける仲間の前で、弱音を吐くわけにはいかなかった。
「なあに~?」
「これ、敵陣からぶんどってきたんだ。みんなに配るから、手伝ってくれ」
そういう総司は珍しく笑顔で、その傍らには台車に乗せられた酒樽が。
「すごい。みんな喜ぶよ」
早速本陣にいたみんなを土間に集める。
「皆の者、先日の戦はご苦労だった。俺からの差し入れだ。どんどん飲んでくれ」
酒樽を見た兵士から、歓声が上がる。
戦場でお酒なんか飲めると思わないもんね。
「……と言っても、まだ戦の最中だからな。軍規を乱さぬよう、一人一杯とする」
「じゅうぶんです!」
「ありがとうございます、土方奉行!」
兵士たちは皆笑顔で、それぞれの桝やお茶碗を持ち、行儀よく樽の前に並ぶ。
あたしは総司と共に、彼らにお酒を汲む手伝いをした。



