幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



船と同じくらいの幅を持った頭に、申し訳程度の髪の毛をこびりつかせた、大きなおっさん。


そのおっさんが、鼻の頭まで波から出てこちらを見ていた。


「海坊主ですね」


残っていた銀月さんが冷静に言った。


ムリムリムリ!気持ち悪い!


海のもののけって、どうして全体的に気持ち悪いのかな!


「任せてください」


銀月さんは短く言うと、ひとつ遠吠えした。


そして、海坊主の方へと飛びかかっていく。


あんな大きいの相手にして、大丈夫なのかな?


そんな心配をよそに、銀月さんは海坊主の耳に噛みつく。


風の音のような悲鳴が辺りに響き、船がひっくり返ってしまいそうなほど大きな揺れが、あたしたちを襲った。


「わああああ!」


みんな、相変わらず海を見ている余裕もないみたい。


「楓、つかまれ!」


遠慮なく総司の体に抱きつく。


その状態で耐えていると、次第に波がおさまってきた。


二人が、もののけを遠ざけてくれているんだ。