船と同じくらいの幅を持った頭に、申し訳程度の髪の毛をこびりつかせた、大きなおっさん。
そのおっさんが、鼻の頭まで波から出てこちらを見ていた。
「海坊主ですね」
残っていた銀月さんが冷静に言った。
ムリムリムリ!気持ち悪い!
海のもののけって、どうして全体的に気持ち悪いのかな!
「任せてください」
銀月さんは短く言うと、ひとつ遠吠えした。
そして、海坊主の方へと飛びかかっていく。
あんな大きいの相手にして、大丈夫なのかな?
そんな心配をよそに、銀月さんは海坊主の耳に噛みつく。
風の音のような悲鳴が辺りに響き、船がひっくり返ってしまいそうなほど大きな揺れが、あたしたちを襲った。
「わああああ!」
みんな、相変わらず海を見ている余裕もないみたい。
「楓、つかまれ!」
遠慮なく総司の体に抱きつく。
その状態で耐えていると、次第に波がおさまってきた。
二人が、もののけを遠ざけてくれているんだ。



