もしかして、あたしたち旧幕府側だけじゃなく、敵側も巻き込もうとしているの?
そんな疑問を裏付けるように、彼らは甲鉄を揺らし続けた。
敵も味方も立つこともできなくなり、その場に座り込む。
「くそっ、このままじゃ沈没させられちまう」
なんとかそばに戻ってきた総司が、忌々しげに波の上を見つめた。
そのとき……。
「もののけのことは、俺たちに任せてよ」
幻聴かと思った。
あまりに懐かしい、こんなところで聞こえるはずのない声が聞こえたから。
そっと振り返ると、水しぶきで濡れた甲板に、白い光が舞い降りた。
「平助……くん」
光は、狐の姿になっていく。
その横の空間が突然歪み、灰色の狼まで現れた。
「銀月!」
総司が叫ぶと、銀月さんはかすかに笑ったかのように見えた。
巨大な、尾の別れた狼。
けれど、あたしたち以外の人間には、その姿は見えていないみたい。



