幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



もしかして、あたしたち旧幕府側だけじゃなく、敵側も巻き込もうとしているの?


そんな疑問を裏付けるように、彼らは甲鉄を揺らし続けた。


敵も味方も立つこともできなくなり、その場に座り込む。


「くそっ、このままじゃ沈没させられちまう」


なんとかそばに戻ってきた総司が、忌々しげに波の上を見つめた。


そのとき……。


「もののけのことは、俺たちに任せてよ」


幻聴かと思った。


あまりに懐かしい、こんなところで聞こえるはずのない声が聞こえたから。


そっと振り返ると、水しぶきで濡れた甲板に、白い光が舞い降りた。


「平助……くん」


光は、狐の姿になっていく。


その横の空間が突然歪み、灰色の狼まで現れた。


「銀月!」


総司が叫ぶと、銀月さんはかすかに笑ったかのように見えた。


巨大な、尾の別れた狼。


けれど、あたしたち以外の人間には、その姿は見えていないみたい。