幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



「何故今夜に限って……」


海は荒れるわ、船は動かなくなるわ。


ただの不運でなければ、やはりもののけが関与しているのかも。


「甲賀さん、回天だけで作戦を実行しましょう」


総司がきっぱりと言った。


そうそう、回天だけで……って、え?


「そうか。きみなら、そう言ってくれると思っていた」


「ええ。この夜を逃したら、甲鉄は二度と奪還できないでしょう」


たしかに、夜が明けて敵に見つかったりしたら、作戦自体が台無しだ。


「土方奉行、お言葉ですが、一隻ではさすがにムリでは?」


最新の軍艦だという甲鉄だけじゃなく、湾内には他の船だっているはずだ。


戦いが始まれば、それらの船にも囲まれてしまう。


おそるおそる進言すると、総司はぎろりとこちらをにらんだ。


その顔は、京にいたころの鬼副長そのもの。


「無理かどうかじゃねえ。やるかやらないかだ」


うええええん、総司に土方鬼副長がのりうつった~!


あ、違うか。逆か。副長の体に総司の魂が入ってるんだもんね。


ううーん、ややこしや~ややこしや~。