「何故今夜に限って……」
海は荒れるわ、船は動かなくなるわ。
ただの不運でなければ、やはりもののけが関与しているのかも。
「甲賀さん、回天だけで作戦を実行しましょう」
総司がきっぱりと言った。
そうそう、回天だけで……って、え?
「そうか。きみなら、そう言ってくれると思っていた」
「ええ。この夜を逃したら、甲鉄は二度と奪還できないでしょう」
たしかに、夜が明けて敵に見つかったりしたら、作戦自体が台無しだ。
「土方奉行、お言葉ですが、一隻ではさすがにムリでは?」
最新の軍艦だという甲鉄だけじゃなく、湾内には他の船だっているはずだ。
戦いが始まれば、それらの船にも囲まれてしまう。
おそるおそる進言すると、総司はぎろりとこちらをにらんだ。
その顔は、京にいたころの鬼副長そのもの。
「無理かどうかじゃねえ。やるかやらないかだ」
うええええん、総司に土方鬼副長がのりうつった~!
あ、違うか。逆か。副長の体に総司の魂が入ってるんだもんね。
ううーん、ややこしや~ややこしや~。



