幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



「これを、川の向こうに渡して……けっこう手間がかかるね」


狼の姿になった銀月さんが、柵の端を噛み、川を泳いで渡る。

そうしてなんとか川を封鎖すると、大阪の方面から、大きな水音が聞こえてきた。


「来たみたいだな」

「ぎりぎりだったね」


今までの静かだった川が嘘のように、ごうごうとなる川の水が、うねって押し寄せてくる。

月光に照らされた水面に、鋭いヒレの先端みたいなものが、ぎらぎら光っていた。


「もののけども、集まれ!」


総司が夜空に向かって叫ぶ。

すると、周囲の木々がざわざわと鳴り、そこから黒い影が落ちてくる。

それは、銀月さんが声をかけていたもののけたちだった。

狼、狐、タヌキ、猿……種類が多すぎて把握しきれないけど、とにかくたくさんの獣があたしたちの前に現れた。


彼らはただの獣ではない。

何十年、何百年と生きてきた、もののけたちだ。


「この顔に見覚えがあるか。俺が、先代頭領の息子、沖田総司だ」


総司が名乗ると、もののけたちがひれ伏す。

きっと、総司の顔は本当にお父さんにそっくりなんだろう。

銀月さんが前に、先代頭領は総司に生き写しだったと言っていたっけ。