「これを、川の向こうに渡して……けっこう手間がかかるね」
狼の姿になった銀月さんが、柵の端を噛み、川を泳いで渡る。
そうしてなんとか川を封鎖すると、大阪の方面から、大きな水音が聞こえてきた。
「来たみたいだな」
「ぎりぎりだったね」
今までの静かだった川が嘘のように、ごうごうとなる川の水が、うねって押し寄せてくる。
月光に照らされた水面に、鋭いヒレの先端みたいなものが、ぎらぎら光っていた。
「もののけども、集まれ!」
総司が夜空に向かって叫ぶ。
すると、周囲の木々がざわざわと鳴り、そこから黒い影が落ちてくる。
それは、銀月さんが声をかけていたもののけたちだった。
狼、狐、タヌキ、猿……種類が多すぎて把握しきれないけど、とにかくたくさんの獣があたしたちの前に現れた。
彼らはただの獣ではない。
何十年、何百年と生きてきた、もののけたちだ。
「この顔に見覚えがあるか。俺が、先代頭領の息子、沖田総司だ」
総司が名乗ると、もののけたちがひれ伏す。
きっと、総司の顔は本当にお父さんにそっくりなんだろう。
銀月さんが前に、先代頭領は総司に生き写しだったと言っていたっけ。



