「あ、あの、すみませ~ん。
わたくし、土方陸軍奉行並の使いの者ですが……」
ロシア人って言ってたけど、果たして言葉は通じるのか?
少し不安になりながら、あたしは屋敷の中に声をかけた。
すると……。
「はい、お待たせいたしました」
中から、着物を着た女の人が姿を現す。
白い西洋風の前掛けをした、日本人だ。
ほっとした瞬間、お辞儀をしたその人が顔を上げた。
「……あ!?」
「あんた……楓?なんでこんなところに?」
「槐!あんたこそなんで!?」
髪を束ねておでこを全開にしたその顔は、間違いなく槐のものだった。
「一族から離れようと思って、いっそ蝦夷にでも行くかってなってさ。
運よくここの主人に拾われて、住み込みで働かせてもらってるんだよ」
槐が言うには、もちろん小次郎も子供も一緒で、交代で面倒を見ながら、働いているらしい。
元忍の経験を活かし、たまに諜報活動なんかもしているそう。



