幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



総司はきっと、土方さんを無能だなんて思っていない。


自分のことを、無能だと思っているんだ。


大事な人たちを守れなかったことが、彼の心に深い傷を残している……。


「そうか……」


松本先生は総司の気持ちを感じ取ってくれたのか、もう反対はしなかった。


「先生、あたしも総……土方さんについていきます」


おっと、危ない。総司って言いそうになっちゃった。


「楓、しかし……」


「あたしは総司と一緒に死んだと思ってください。彼がいない今、あたしには新撰組しかないんです」


松本先生が悲しそうな顔をするから、罪悪感がわいてくる。

けれど、ここで退くことはできない。


「お前も、土方さんと同じってことか……」


「はい。今さら、他の人のお嫁さんになんてなれません」


普通の女子の生活にあこがれたこともあった。


けど、結局は戦い続ける総司の傍にいることを望んでしまう。


それが、あたしなんだ。


「そうか……。じゃあ土方さん、楓をよろしくお願いします」


松本先生はがっくりとうなだれながらも、総司に丁寧に頭を下げた。


そうして会津降伏からおよそ一か月弱後、あたしたちは蝦夷に向けて出港したのだった。


勝つためじゃない。


ただ、自分らしく生きるために。