総司はきっと、土方さんを無能だなんて思っていない。
自分のことを、無能だと思っているんだ。
大事な人たちを守れなかったことが、彼の心に深い傷を残している……。
「そうか……」
松本先生は総司の気持ちを感じ取ってくれたのか、もう反対はしなかった。
「先生、あたしも総……土方さんについていきます」
おっと、危ない。総司って言いそうになっちゃった。
「楓、しかし……」
「あたしは総司と一緒に死んだと思ってください。彼がいない今、あたしには新撰組しかないんです」
松本先生が悲しそうな顔をするから、罪悪感がわいてくる。
けれど、ここで退くことはできない。
「お前も、土方さんと同じってことか……」
「はい。今さら、他の人のお嫁さんになんてなれません」
普通の女子の生活にあこがれたこともあった。
けど、結局は戦い続ける総司の傍にいることを望んでしまう。
それが、あたしなんだ。
「そうか……。じゃあ土方さん、楓をよろしくお願いします」
松本先生はがっくりとうなだれながらも、総司に丁寧に頭を下げた。
そうして会津降伏からおよそ一か月弱後、あたしたちは蝦夷に向けて出港したのだった。
勝つためじゃない。
ただ、自分らしく生きるために。



