「ちっ!」
部隊を指揮する立場になってしまった総司が、うっかり踏み込んでいくわけにはいかない。
「あたしが様子を見てくる」
「おい、待て……」
制止を聞かず、あたしは思い切って霧の中に飛び込んだ!
と、思ったんだけど……。
「あ、あれ?」
すり鉢状になっているはずの峠に下りていくはずが、霧の上に立ってしまっていた。
「えい、えい!」
どうなってるの?
足元の白い霧を踏んでみるけれど、固い土みたいにびくともしない。
「楓、戻って来い!結界かもしれねえ!」
結界?
まさか、強力な結界が峠にはりめぐらされているというの?
いったい、この下で何が……。
霧の上を走り、総司の元に戻る。
「ちっ……ただの人は、こういうとき不便だな」
人狼だったころは、もっと呪術に敏感だったはずだと、総司はぼやいた。



