幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



「ちっ!」


部隊を指揮する立場になってしまった総司が、うっかり踏み込んでいくわけにはいかない。


「あたしが様子を見てくる」

「おい、待て……」


制止を聞かず、あたしは思い切って霧の中に飛び込んだ!

と、思ったんだけど……。


「あ、あれ?」


すり鉢状になっているはずの峠に下りていくはずが、霧の上に立ってしまっていた。


「えい、えい!」


どうなってるの?


足元の白い霧を踏んでみるけれど、固い土みたいにびくともしない。


「楓、戻って来い!結界かもしれねえ!」


結界?

まさか、強力な結界が峠にはりめぐらされているというの?


いったい、この下で何が……。


霧の上を走り、総司の元に戻る。


「ちっ……ただの人は、こういうとき不便だな」


人狼だったころは、もっと呪術に敏感だったはずだと、総司はぼやいた。