白虎隊のみんなは、もう立派な武士の精神を持っている。
会津のためなら、自分の命を捧げることも厭わない。
いや、それが幸せだと心から思っているみたい。
それでも、あたしは彼らに死んでほしくなかった。
「ああ。女子供を守るのが俺たちの役目だ」
総司は土方さんの顔できっぱりと言った。
やっと、この顔も見慣れてきたな。
いや、新撰組に入隊しころからずっと見てたけど。
総司の魂が入ってから、鬼の副長とは全く別人だもん。
「あれ……?」
真夏にはふさわしくない冷たい風が突然、忍装束の帯を揺らした。
木々も揺らされ、枝や葉がざわざわとうるさく鳴った。
「なんだ?」
総司は立ち上がり、峠の方へと走っていく。
「おい!奇襲かもしれない!起きろ!」
途中で待機している味方に声をかけながら、峠を見渡せる位置までやってきた。
しかし……。
「なにこれ?」
四方を山に囲まれた峠が宵闇と濃い霧に覆われて、何も見えない状態になっていた。
まるで足元に、雲海が広がっているみたい。



