幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



白虎隊のみんなは、もう立派な武士の精神を持っている。


会津のためなら、自分の命を捧げることも厭わない。


いや、それが幸せだと心から思っているみたい。


それでも、あたしは彼らに死んでほしくなかった。


「ああ。女子供を守るのが俺たちの役目だ」


総司は土方さんの顔できっぱりと言った。


やっと、この顔も見慣れてきたな。


いや、新撰組に入隊しころからずっと見てたけど。


総司の魂が入ってから、鬼の副長とは全く別人だもん。


「あれ……?」


真夏にはふさわしくない冷たい風が突然、忍装束の帯を揺らした。


木々も揺らされ、枝や葉がざわざわとうるさく鳴った。


「なんだ?」


総司は立ち上がり、峠の方へと走っていく。


「おい!奇襲かもしれない!起きろ!」


途中で待機している味方に声をかけながら、峠を見渡せる位置までやってきた。

しかし……。


「なにこれ?」


四方を山に囲まれた峠が宵闇と濃い霧に覆われて、何も見えない状態になっていた。


まるで足元に、雲海が広がっているみたい。