幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



誰に笑われたって良い。


もうこの国に、本当の武士なんていないのだから。


いるとしたらそれは、新撰組の仲間たちだけだ。


しきたりも矜持も、すべて捨ててしまえ。


どんな恥だって、あたしたちが胸を張っていれば、それは誇りに変わるはずだ。


散っていく命の重みを知っているあたしたちだからこそ、生き延びなきゃ。


「どんなに無様でも惨めでも、諦めない総司が好き」


後ろからぎゅっとしがみつくと、総司はその腕で、あたしの体をそっと離した。


そして体を反転させると、あたしをその胸にすっぽりと包み込んだ。


「……お前がいてくれてよかった」


胸板の厚みが違う。においが違う。声が違う。


指の細さも、手のひらの大きさも、全部全部、違う。


でも、どうしてだろう。


腕の中の安心感は、一緒なの。


「悪いけど、もうお前を離す気はないから。
辛い戦いばかりの日々になるだろうが、覚悟しておけよ」