幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



「愚か者め」


体勢を立て直そうとするあたしの腹に、するどい衝撃が加わった。


朧の足がめり込んだのだと理解する前に、あたしの体は吹っ飛んでいた。


着地もできず、無様に水たまりの中を転がる。


「俺の手を汚さずとも、新撰組についている限り、お前は長生きできんな」


痛みをこらえ、落とした苦無を拾おうとした手を、踏みつけられる。


ばしゃりと跳ね上がった雨水が、力なく落ちていく。


「そんなこと……ない……!」


新撰組には、まだ土方さんや斉藤先生、総司も平助くんもいる。


彰義隊みたいに、全滅したりしない。


きっと活路を見出して、みんなで生き残るんだ。


「ひとつ、教えてやろうか?」


あたしの手を踏みつけたまま、朧は愉悦に満ちた声で言う。


見上げてにらみつけるあたしを、あざ笑うように。


「土方歳三は、もう長くない」

「な、にを……!」


土方さんが、死んでしまうと、そう言うの?


「俺がかけた呪術が、もうすぐ完成するはずだ」


呪術?もしや、あの黒い呪符のこと?