「愚か者め」
体勢を立て直そうとするあたしの腹に、するどい衝撃が加わった。
朧の足がめり込んだのだと理解する前に、あたしの体は吹っ飛んでいた。
着地もできず、無様に水たまりの中を転がる。
「俺の手を汚さずとも、新撰組についている限り、お前は長生きできんな」
痛みをこらえ、落とした苦無を拾おうとした手を、踏みつけられる。
ばしゃりと跳ね上がった雨水が、力なく落ちていく。
「そんなこと……ない……!」
新撰組には、まだ土方さんや斉藤先生、総司も平助くんもいる。
彰義隊みたいに、全滅したりしない。
きっと活路を見出して、みんなで生き残るんだ。
「ひとつ、教えてやろうか?」
あたしの手を踏みつけたまま、朧は愉悦に満ちた声で言う。
見上げてにらみつけるあたしを、あざ笑うように。
「土方歳三は、もう長くない」
「な、にを……!」
土方さんが、死んでしまうと、そう言うの?
「俺がかけた呪術が、もうすぐ完成するはずだ」
呪術?もしや、あの黒い呪符のこと?



