「斉藤先生……平助くん……」
戻ろうかと思った瞬間、近くに大砲が撃ち込まれた。
大きな音が響き、地が揺れる。
飛んで来た土塊を避けるために目を閉じた。
そして、そっとまぶたを開けると……。
「また、会ったな。こんなところで何をしている」
「あんたは……!」
音もなく、あたしの目の前に立ちふさがるのは、銀髪に紫の目の男。
憎き近藤局長の仇、朧だ。
少し長い前髪に、短く切った後ろ髪。
その銀髪から雨の滴が落ちる。
あたしは懐から苦無を取りだした。
「おいおい、本気で俺に勝てると思ってるのか?やめておけ」
勝てる勝てないの問題じゃない。
ここで近藤局長の仇を討たなければ。
胸が熱い。
この男に対する憎しみの熱で、体の内から燃えてしまいそう。
「絶対……許さないっ!」
あたしは苦無を持ったまま、朧に突っ込んだ。
その胸を引き裂こうと苦無を振り下ろす。
けれど、ヒュンと音を立てた苦無は、宙を斬っただけだった。
朧は紙一重で身をかわし、あたしを見下ろす。



