幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



「斉藤先生……平助くん……」


戻ろうかと思った瞬間、近くに大砲が撃ち込まれた。

大きな音が響き、地が揺れる。

飛んで来た土塊を避けるために目を閉じた。


そして、そっとまぶたを開けると……。


「また、会ったな。こんなところで何をしている」

「あんたは……!」


音もなく、あたしの目の前に立ちふさがるのは、銀髪に紫の目の男。


憎き近藤局長の仇、朧だ。


少し長い前髪に、短く切った後ろ髪。


その銀髪から雨の滴が落ちる。


あたしは懐から苦無を取りだした。


「おいおい、本気で俺に勝てると思ってるのか?やめておけ」


勝てる勝てないの問題じゃない。


ここで近藤局長の仇を討たなければ。


胸が熱い。

この男に対する憎しみの熱で、体の内から燃えてしまいそう。


「絶対……許さないっ!」


あたしは苦無を持ったまま、朧に突っ込んだ。


その胸を引き裂こうと苦無を振り下ろす。


けれど、ヒュンと音を立てた苦無は、宙を斬っただけだった。


朧は紙一重で身をかわし、あたしを見下ろす。