幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



「俺が生きていると、楓に迷惑がかかる。もう死んだ方がいいのかもしれない」


ぽつりとこぼすと、二人は顔を見合わせ、ぷっと吹き出した。


「な、何が面白いんですか」


「いやあ、お前馬鹿だなあ。あの子が迷惑だなんて思うわけないじゃないか」


それは、楓は情が深い女だから……。


「それに、彼女は自分の体より、総司の命をとると思うよ。間違いなく」


山南さんが断言する。

いや、それもわかってるけど。


「……そして、それに何の後悔もしない子だ。
総司は黙って、楓くんの言う通りにするべきだと思うよ」


「山南さん」


「そうだ。今のお前を導いてくれるのは、俺でもトシでもない。
何の見返りも求めずにお前を想ってくれる、彼女だ」


近藤先生が俺の肩を強くたたく。


その瞬間、楓の悲しそうな背中が見えた気がした。


ああ……そうだ。


今より元気な頃には、もう二度と離さないと誓った。


できるだけ笑っていてほしいと、願った。


そんな彼女を悲しませているのは、他でもない、俺自身だ……。


気づいた瞬間、何かの呪術が解けていくような気がした。