「俺が生きていると、楓に迷惑がかかる。もう死んだ方がいいのかもしれない」
ぽつりとこぼすと、二人は顔を見合わせ、ぷっと吹き出した。
「な、何が面白いんですか」
「いやあ、お前馬鹿だなあ。あの子が迷惑だなんて思うわけないじゃないか」
それは、楓は情が深い女だから……。
「それに、彼女は自分の体より、総司の命をとると思うよ。間違いなく」
山南さんが断言する。
いや、それもわかってるけど。
「……そして、それに何の後悔もしない子だ。
総司は黙って、楓くんの言う通りにするべきだと思うよ」
「山南さん」
「そうだ。今のお前を導いてくれるのは、俺でもトシでもない。
何の見返りも求めずにお前を想ってくれる、彼女だ」
近藤先生が俺の肩を強くたたく。
その瞬間、楓の悲しそうな背中が見えた気がした。
ああ……そうだ。
今より元気な頃には、もう二度と離さないと誓った。
できるだけ笑っていてほしいと、願った。
そんな彼女を悲しませているのは、他でもない、俺自身だ……。
気づいた瞬間、何かの呪術が解けていくような気がした。



