幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



「ぁ……っ、……」


朧は悲鳴も上げず、びくりびくりと体を震わせた。


「近藤さん!」


平助くんが局長の元へ走り、倒れていく体を支えた。

けれど、そのまぶたは既に閉じられている。


「ああっ……」


総司が暗い空に昇る、光の玉に手を伸ばす。


けれどそれは局長に帰ることなく、どんどん上空へと昇っていってしまう。


『ちっ!』


銀月さんが朧から牙を離し、空へと舞い上がる。

けれど。


「ふ……もののけも、案外馬鹿だな」


力尽きたと思った朧の声が、背後でした。


その途端、力尽きたはずの朧の体がただの丸太に変わっていく。


変わり身の術だったの?


振り返ると、後ろに立った朧の腕が、懐から何かを取りだそうとしていた。


「……だめっ!」


気づいた瞬間、体が走り出していた。

慌てて苦無を投げつける。


けれどそれより一瞬先に、彼の手は上空に向かい、何かを投げつけた。


「銀月さん、危ない!」


黒い鳥のように見えたそれは、もう一枚の呪符。


銀月さんはあたしの声に反応し、地上を振り返った。