「総司、大丈夫?」
声をかけると、総司はハッとしたような顔で、こちらを振り向く。
その口を押えていた手のひらに、赤いものがついていた。
「あっ……!」
「静かにしろ」
総司は眉をひそめ、あたしの手をつかむと、廊下の奥へと足早に歩いていく。
局長の綿入れが、静かな音を立てて廊下に落ち、置き去りにされた。
やがて総司とあたしに割り当てられた部屋に入ると、やっと手が離された。
「……すまん。血が出たのは、今が初めてだ。黙ってたわけじゃない」
いきなり謝られて、責める言葉を失ってしまう。
咳がひどいとは思ってたけど、血を吐いてしまうなんて。
隊務から離れて狼化することもなくなり、体力的には伏見にいたときよりずっと楽なはずなのに……。
「やっぱり血を飲まなきゃダメだよ」
池田屋のときのように、あたしの血を飲めば楽になるはずだ。
けれど、総司はなかなか首を縦に振らない。
「池田屋で大量の血を飲んだのに、完治しなかったんだ。
今良くなっても、きっとまた、同じことの繰り返しだ。
そのたびにお前を傷つけるなんて……」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
うつむく総司の手を、無理やり握る。
「傷つくのなんか構わないよ。嫁入り前の娘なら問題かもしれないけど、あたしはあんたの嫁になったんだ。
夫婦が支え合うのは当然のことでしょう?」
のぞきこむと、固かった総司の表情が、くしゃりと歪んだ。



