幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



「ごほっ、ごほ、ごほ……っ。楓……」

「無理するからだよ」


総司は咳き込みながら、背中を丸める。

その体を支えながら、仲間の方へ向き直る。


「覚悟!」


銀月さんに吹き飛ばされた朧に、局長が刀を振り上げる。


勝った……!


そう誰もが確信した刹那。

朧の紫の瞳に、一線の光が走る。


あっと思った瞬間には、彼の手から局長の胸に、何かが投げつけられた。


「なっ!?」


それは、副長がやられたのと同じ、黒い呪符だった。


呪符は局長の体に張り付き、膨大な闇を放つ。


「うわああああっ」

「先生!!」

「局長!!」


銃で撃たれた傷を縫合する時も悲鳴をもらさなかった局長が、絶叫する。


ふらつく体で、総司が走ろうとした、そのとき。


呪符が貼り付いた局長の胸の中から、光る玉が突き抜けてきた。


「あれは……?」


どこかで見たことがある。


あれはたしか、油小路事件のとき。


銀月さんが平助くんの体から魂だけを取りだしたときと、同じ光景だ。


もしやあれは、局長の魂?


「いけない!」


銀月さんが叫び、朧に向かって跳ぶ。


倒れた朧にまたがると、その首にがぶりと噛みついた。