「ごほっ、ごほ、ごほ……っ。楓……」
「無理するからだよ」
総司は咳き込みながら、背中を丸める。
その体を支えながら、仲間の方へ向き直る。
「覚悟!」
銀月さんに吹き飛ばされた朧に、局長が刀を振り上げる。
勝った……!
そう誰もが確信した刹那。
朧の紫の瞳に、一線の光が走る。
あっと思った瞬間には、彼の手から局長の胸に、何かが投げつけられた。
「なっ!?」
それは、副長がやられたのと同じ、黒い呪符だった。
呪符は局長の体に張り付き、膨大な闇を放つ。
「うわああああっ」
「先生!!」
「局長!!」
銃で撃たれた傷を縫合する時も悲鳴をもらさなかった局長が、絶叫する。
ふらつく体で、総司が走ろうとした、そのとき。
呪符が貼り付いた局長の胸の中から、光る玉が突き抜けてきた。
「あれは……?」
どこかで見たことがある。
あれはたしか、油小路事件のとき。
銀月さんが平助くんの体から魂だけを取りだしたときと、同じ光景だ。
もしやあれは、局長の魂?
「いけない!」
銀月さんが叫び、朧に向かって跳ぶ。
倒れた朧にまたがると、その首にがぶりと噛みついた。



