幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



「嫌だね!」


あたしは苦無をかまえ、朧と対峙する。


小銃の速さにはちっとも敵わないだろうけど、だからってここからどくわけにはいかない。


裏切り者と呼ばれたからこそ、受け入れてくれた人たちのために、役目を果たさなきゃいけない。


そうだよね、平助くん。


あたしは局長に、総司を頼むと言われたんだ。


「く、そ……っ」


総司がうなったと同時、朧が引き金に指をかけた。


「……死を選ぶか。それもいいだろう」


撃たれる。

そう思った瞬間、苦無を投げた。

けれどそれは簡単に避けられ、向けなおされた銃口が火を噴く。


思わず目をつぶった、その瞬間だった。


「う、がぁあああっ!」


獣の鳴き声がした。


ハッと目を開けると、いつの間にか総司があたしの目の前に立っていた。


「総司!」


短く切った髪からとがった耳が、洋装の袖から鋭い爪がのびた腕がのぞいている。


手はにぎりしめられており、なんでだろうと思った瞬間、それが開かれた。


そこからぽろりと落ちたのは、鉄でできた小銃の弾だった。