幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



「局長っ、ごめんなさい!」


居ても立ってもいられず、あたしは駆けだす。

そして朧に向かい、苦無を投げつけた。

真っ直ぐに飛んでいった苦無を、朧は片手に持った短刀で払いのける。


「はっ……我が一族のくのいちにしては、へたくそだな」


何て言われたっていい。


あたしは総司を支えて後退すると、両手を広げて彼の前に立った。

朧は悠々とした動作で、こちらに銃を向けなおす。


「どけ。女だとて、裏切り者には容赦はせぬぞ」


「あたしを知っているの?」


「大奥から抜け出した大馬鹿者。一族の恥。岡崎の村にお前を知らぬ者はいない」


だよね……あたしのせいで、岡崎は幕府に手を切られたんだもんね。


幕府がなくなちゃった今、彼らは「官軍について良かった~」とか思ってるかもしれないけど。


「それでもお前の血は、利用価値がある。我らに恭順すれば、活かしてやらないことはない。
さあ、そこをどけ」


……って言われて、どけるか!


「楓……どくんだ……」


総司の苦しそうな声が、後ろから聞こえた。