「局長っ、ごめんなさい!」
居ても立ってもいられず、あたしは駆けだす。
そして朧に向かい、苦無を投げつけた。
真っ直ぐに飛んでいった苦無を、朧は片手に持った短刀で払いのける。
「はっ……我が一族のくのいちにしては、へたくそだな」
何て言われたっていい。
あたしは総司を支えて後退すると、両手を広げて彼の前に立った。
朧は悠々とした動作で、こちらに銃を向けなおす。
「どけ。女だとて、裏切り者には容赦はせぬぞ」
「あたしを知っているの?」
「大奥から抜け出した大馬鹿者。一族の恥。岡崎の村にお前を知らぬ者はいない」
だよね……あたしのせいで、岡崎は幕府に手を切られたんだもんね。
幕府がなくなちゃった今、彼らは「官軍について良かった~」とか思ってるかもしれないけど。
「それでもお前の血は、利用価値がある。我らに恭順すれば、活かしてやらないことはない。
さあ、そこをどけ」
……って言われて、どけるか!
「楓……どくんだ……」
総司の苦しそうな声が、後ろから聞こえた。



