幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



「うわああああっ」


全身が固い鱗で覆われているといっても、相手はただの刀じゃない。もののけの牙だ。


銀月さんの牙は、固い鱗をぶつりと突き破る。


どてばたと蠢くヘビ状の下半身を前足で押さえようとするが、敵も力が強い。


二人はもんどりうち、大きな音を立てて地上に倒れた。


銀月さんは牙を突き立てたまま、相手の力が尽きるのを待っているみたいだ。


「これが、もののけどうしの戦い……」


黙ってことの成り行きを見守っていた局長の喉が、ごくりと鳴った。


「さすが……っていうか、総司!」


平助くんの叫び声でハッとする。


いつの間にか背を丸めた総司の背後に、朧が忍び寄っていた。


その手には、副長を撃ったときの小銃が。


「総司っ、早く離れて!」


あたしたちの声は聞こえているみたいだけど、まだ咳き込み続ける総司は動くことができない。


銀月さんはまだばたばた動いている加納から牙を離せず、平助くんは敵を凍らせている途中。


ふたりとも手が離せない状況だ。


その隙をつき、朧は小銃の引き金に指をかけ、総司の頭に突き付けた。