幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



禍根……たしかにこいつらは災いの元みたいなものだけど。


「私が行きましょう。楓様は、ここを動かないでください」


銀月さんがすっと前に出て、狼の姿に戻る。


「なんと、狼のもののけか」


朧が感心したように言うと、銀月さんはぐるると喉を鳴らした。


「お前たちが変身できたということは……」


総司は暗い結界の上を見上げる。

けれど、そこに月はない。


「俺たちは純粋なもののけだからね。総司は無理するなよ!」


平助くんはそう言うと、ふうっと細く息を吐き出す。

それは氷の結晶となり、敵の尾っぽにこびりついていく。


「凍らせようとしても、無駄だ。裏切り者め」


元御陵衛士の敵は平助くんにそう怒鳴ると、蛇のように裂けた口から、紫色の霧を吐き出した。


「局長、あれを吸っちゃダメです!」


あれはたしか、毒霧だ。

吸ったものはたちまち眠ってしまう。


局長は慌てて、着物の袂で鼻と口を覆い、その場に屈みこんだ。


「くそう、俺も刀さえあれば……」


悔しそうに言うけれど、もちろんここには局長の愛刀はない。