幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



「くっ……」


右手に銃を、左手に刀を持っていた副長が、思わず膝をつく。

その顔が、苦痛にゆがんでいた。


「貴様ぁぁぁっ!!」


総司の怒号が空気を揺らす。

力任せにぶんと刀を凪ぐが、忍は軽やかに宙を舞い、それを避けた。


「待て!」


目をつりあげて叫ぶ総司。

その周りを囲うように、もののけたちが集まってきていた。

平助くんも同じように取り囲まれ、身動きが取れない状態に。


「土方歳三、覚悟!」


二人の隙をつき、忍が副長目がけて走り出す。


「ダメええっ!」


あたしは目の前を通り過ぎていく忍の腰に、夢中でしがみついた。

動きが遅くなった彼の腕に噛みつき、片手で苦無を取り出し、脇腹を狙う。けれど。


「邪魔だ!」


高速で放たれた忍の拳が、お腹にめり込んだ。


「くう……っ」


痛みと吐き気に襲われ、動けなくなる。

手を離した途端、忍は副長に向かって、何かを投げつけた。


黒くて薄っぺらい……あれは、呪術に使う呪符?


副長は刀を持ち、それを斬ろうとした。