幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



局長の傷は、そう簡単に癒えるものじゃない。

さらに、剣客としての命を奪いかねない傷だ。

早く良くなるといいけど……。


「では、私たちはこれにて。近藤さん、本を読んだりするのも結構ですが、できるだけ横になっていてくださいよ」


そう指示すると、松本先生はあたしにも一緒に部屋の外に出るように命じた。

局長がゆっくり休めるようにするためだ。


「何かありましたら、何なりとお申しつけくださいね」


部屋を出るときにそう言って振り返ると、局長はいつもの明るい笑顔でうなずいてくれた。




局長の部屋を離れ、縁側にさしかかると、庭で総司が素振りをしているのが見えた。

真剣な顔で一心に刀を振るその様子は、何かを振り払おうとしているようにも見える。


「おーい、沖田くん」


松本先生が呼ぶと、総司はすぐに刀をおさめて近づいてきた。


「なんでしょう」

「お前たちには話しておこうと思ってな」


顔を寄せるように指で指示されたあたしたちは背を丸め、先生の言葉に注意深く耳を傾ける。


「……近藤さん、もう刀は振るえねえぞ」

「なっ…」

「そんな!」


突然の残酷すぎる宣告。

先生は驚いたあたしたちを「しっ」とにらむ。