「……もののけ、出てこないなあ」
「岡崎一族もな」
「今日これ以上出て行ったら、副長怒るだろうねえ……」
戦いに参加できないあたしたちは、やきもきしながら様子をうかがい続けていた。
すると、最前線にいた幕兵が、突然刀を捨ててしまった。
どうしたんだろう。
「いやだ……もう嫌だ!死にたくねえ!」
激しい戦いに心が耐え切れなくなったのか、若そうに見える彼は、城とは逆方向に駆けだす。
しかしその足は、すぐに止まってしまい、動かなくなった。
彼は目を見開いたまま、膝から地面へと崩れ落ちる。
その後ろには、土方副長が立っていた。
副長の刀の切っ先から、倒れた彼の背中へと、赤い線が繋がっている。
「まさか……味方を斬ったの?」
副長は刀を振り、ついた血を払うと、その様子を見て怯えた様子の味方に向かい、大声で怒鳴りつけた。
「逃げようだなんて思う不届き者は、この俺が……新撰組副長・土方歳三が斬り捨てる!!」



