幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



「……もののけ、出てこないなあ」

「岡崎一族もな」

「今日これ以上出て行ったら、副長怒るだろうねえ……」


戦いに参加できないあたしたちは、やきもきしながら様子をうかがい続けていた。

すると、最前線にいた幕兵が、突然刀を捨ててしまった。

どうしたんだろう。


「いやだ……もう嫌だ!死にたくねえ!」


激しい戦いに心が耐え切れなくなったのか、若そうに見える彼は、城とは逆方向に駆けだす。

しかしその足は、すぐに止まってしまい、動かなくなった。

彼は目を見開いたまま、膝から地面へと崩れ落ちる。

その後ろには、土方副長が立っていた。

副長の刀の切っ先から、倒れた彼の背中へと、赤い線が繋がっている。


「まさか……味方を斬ったの?」


副長は刀を振り、ついた血を払うと、その様子を見て怯えた様子の味方に向かい、大声で怒鳴りつけた。


「逃げようだなんて思う不届き者は、この俺が……新撰組副長・土方歳三が斬り捨てる!!」