幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



「複数で斬りかかるなんて、せこい!」


あたしは懐から苦無を取り出し、敵の足元に投げつけた。


「わああっ」


何本かは走っていた敵の足を傷つけることに成功した。
けれど。


「邪魔だ、どけっ!」


副長は怒鳴ると、自分から敵の群れに突っ込んでいく。

力任せになぎ払われた刀を、膝をついて避ける。

立ち上がると同時に地を蹴り、一人切り上げたと思うと、着地しながらもう一人を袈裟懸けにした。

噴きあがる赤に染まるその姿は、鬼そのものだった。


「て……撤退だ!」


敵は一旦退いていく。


「よし、一同隊列を組みなおせ!門へ近づくぞ」

「おう!」


味方はぞろぞろと副長についていく。


「……やっべ、斬られるかと思った」


平助くんがのっそりと、隠れていた茂みから顔を出す。


「あいつら、普通の人間ばかりだったな。城の中もそうだといいけど」

「うん、油断できないね。っていうか、体は大丈夫?」

「ああ、今のところはな」


総司は何食わぬ顔で言う。

今日は調子がいいみたいで、ほっとした。

けど、おとなしくしているときより、戦ってる時の方が調子がいいってどうなのよ。