局長狙撃事件から、1週間後。
「まったく、大した回復力ですな」
局長の包帯を取り換えたあと、松本先生が感心して言った。
「いやあ、先生の腕が良かったからです。もう死ぬのかと思っていましたよ」
「またまた。これだけの傷を負って、よく持ちこたえられたものです。
山崎くんの縫合の技術も、一度教えただけとは思えない。ぜひ私の助手にほしいのですが、どうでしょう」
「ははは。彼はうちの貴重な監察方ですから、はいとは言えませんな」
あたしは談笑する二人に、用意してきたお茶を差し出した。
今あたしたちがお世話になっているのは、大阪奉行所。
伏見の屯所と同じくらい立派な建物で、局長もゆっくりと養生できたみたい。
銃弾を受けた傷はふさがりかけていて、今のところ化膿もしていない。
けれどまだまだ完治とは程遠く、松本先生が処方してくれた痛み止めを毎食後に飲んでいる。
「松本先生、そろそろ刀を振ってもよろしいかな?もちろん、左腕だけでけっこうですが」
「無茶言わないでください。今そんなことをしたら、傷が開いてしまう。痛みがなくなるまで、おとなしくしていてください」
普通に注意された局長は、「そうですよね」と苦笑した。



