幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



夜遅くになっても、土方副長は部屋に戻ってこなかった。


明日には北上を開始するという話だから、準備に忙しいのかな。


なかなか眠れなくて体を起こすと、隣で総司が規則的な寝息を立てていた。

その枕元では、子狐の姿の平助くんがすやすやと寝ている。

あたしは二人を起こさないように注意して、部屋から出た。

廊下を歩いていくと、まだちらほらと灯りがついている部屋を見つけた。

境内では見張りの兵たちがかがり火を焚いている。


人気のない裏庭に回って、庭の石に腰をかける。

一人きりになると、途端に昼間のことを思い出して、涙がじわりと浮かんできた。


総司との別れは、もうすぐそこまで来ているのかもしれない……。


二人でいられるうちは、できるだけ普通にしていようと思う。

そうして無理に笑っているうちは大丈夫だったのに、夜になると途端に不安になってしまった。


「はあ……」


うつむいていた顔を上げ、夜空を見上げると……。


「お!?」


そこにあったのは夜空じゃなくて、見覚えのある人の顔だった。

綺麗な二重瞼に、薄い唇。