幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



「……ごめんな。夫として、何もしてやれないで」

「あたしだって、嫁らしいことなーんにもしてないよ」

「そうでもねえだろ」


ぽつりぽつりと、総司は京にいたころの思い出を語る。


炊事場で一緒にみんなの食事を用意したこと。

冬の冷たい水にも負けずに、汚れた着物を一生懸命洗った手が、氷みたいに冷たくなったこと。

破れた着物を繕えば、へたくそすぎて笑われた。


「人狼の俺の傍にいてくれた。それだけで、どれだけ救われたことか」


総司がそっと、あたしを抱き寄せる。

それが限界だった。

とうとう我慢しきれずに溢れた涙が、彼の胸を濡らす。


「ありがとう」


低い声が耳から入って、胸の中にすとんと落ちた。