* * *
あの日から1週間と数日が経っていた。彼女の背中を久しぶりに見て、声を掛けないでいることができなかった。会えて嬉しいという気持ちと、引き止めてどうするのだという気持ちがせめぎ合う中に立っているようだった。
「…聞いてほしいことが…あります。」
聞かせてほしい、どんな言葉でも。たとえば、彼女が気にしているように、まとまっていなかったとしてもだ。
「…うん。わかった。」
「なるべく…近いうちにって…思ってるんですが…あのでも…何から話したらよいのか…まとまらなくって…。」
話しているうちに小声になっていく彼女を見つめていると、ゆっくり時間をかけて今すぐ一つ一つ聞きたいと思ってしまう。もちろん、彼女がそんな展開を望んでいないことはわかっていてもだ。
「…無理にまとめなくていいよ。思いついた順でいい。時間はあるから。」
「…だめ、です…。こ、これは…決めたことです。」
変なところは頑固だ。これは最近になってようやくわかってきたことだ。『これは私の戦いなんです』なんて真顔で小さく呟く彼女に笑いが零れた。
「えっ…?」
「真面目すぎて…つい。ごめん。バカにしてるわけじゃ、ないんだけど。」
一瞬驚いた顔をした彼女の表情がみるみるうちに歪んでいく。その瞳に涙がたまっていくのを見て焦ったのは自分だった。
「松下さん?ごめん…なんで…。」
「ち、違うんです…ごめんなさい…私、その…浅井さんが悪いんじゃなくて…ほっと…して…。」
「え…?」
「…もう、こうやって普通にお話しすること…できないかもしれないって…思ってたから…。」
ゆっくりと紡がれた言葉に含まれた不安が手に取るようにわかって、震えた彼女の身体を抱きしめたい衝動に駆られた。その衝動を抑えて、口を開く。
「松下さんが話したいって思ってくれてる間は、…話、聞くよ。何でも。」
安心させたくて言ったこの言葉は逆効果だったようだ。彼女の涙腺はさらに崩壊した。
「…松下さん。」
「…はい…。」
「一緒に図書館に行こう。昼過ぎてからでいいよ、2時くらいとかで。俺はゆっくり本を読むし、松下さんは考える。それで…。」
一呼吸置いてから、伝えるべきことを口にした。
「そこまでの考えを帰りに教えて。残りは一緒に考えるし、聞くから。」
あの日から1週間と数日が経っていた。彼女の背中を久しぶりに見て、声を掛けないでいることができなかった。会えて嬉しいという気持ちと、引き止めてどうするのだという気持ちがせめぎ合う中に立っているようだった。
「…聞いてほしいことが…あります。」
聞かせてほしい、どんな言葉でも。たとえば、彼女が気にしているように、まとまっていなかったとしてもだ。
「…うん。わかった。」
「なるべく…近いうちにって…思ってるんですが…あのでも…何から話したらよいのか…まとまらなくって…。」
話しているうちに小声になっていく彼女を見つめていると、ゆっくり時間をかけて今すぐ一つ一つ聞きたいと思ってしまう。もちろん、彼女がそんな展開を望んでいないことはわかっていてもだ。
「…無理にまとめなくていいよ。思いついた順でいい。時間はあるから。」
「…だめ、です…。こ、これは…決めたことです。」
変なところは頑固だ。これは最近になってようやくわかってきたことだ。『これは私の戦いなんです』なんて真顔で小さく呟く彼女に笑いが零れた。
「えっ…?」
「真面目すぎて…つい。ごめん。バカにしてるわけじゃ、ないんだけど。」
一瞬驚いた顔をした彼女の表情がみるみるうちに歪んでいく。その瞳に涙がたまっていくのを見て焦ったのは自分だった。
「松下さん?ごめん…なんで…。」
「ち、違うんです…ごめんなさい…私、その…浅井さんが悪いんじゃなくて…ほっと…して…。」
「え…?」
「…もう、こうやって普通にお話しすること…できないかもしれないって…思ってたから…。」
ゆっくりと紡がれた言葉に含まれた不安が手に取るようにわかって、震えた彼女の身体を抱きしめたい衝動に駆られた。その衝動を抑えて、口を開く。
「松下さんが話したいって思ってくれてる間は、…話、聞くよ。何でも。」
安心させたくて言ったこの言葉は逆効果だったようだ。彼女の涙腺はさらに崩壊した。
「…松下さん。」
「…はい…。」
「一緒に図書館に行こう。昼過ぎてからでいいよ、2時くらいとかで。俺はゆっくり本を読むし、松下さんは考える。それで…。」
一呼吸置いてから、伝えるべきことを口にした。
「そこまでの考えを帰りに教えて。残りは一緒に考えるし、聞くから。」



