「それで、玲菜ちゃんはその浅井さんにふられたと。どうやって告白したの?」

 ずけずけと尋ねる福島に、こういった会話に慣れていない美海は聞いていいものかと内心びくびくしてしまうが、玲菜は少し渋ってからも口を開いた。

「…彼女にしてって言った。…でも、圭ちゃんは抱いてくれなかった。」
「だっ…!?」
「わーお、玲菜ちゃんから攻めたわけだー。今時の女子高生って逞しい!」

 美海も2年前は女子高生だったはずだが、玲菜のように攻めることなど到底できるはずもない。さらりと玲菜の口から出た『抱いてくれない』という言葉に心臓がドクドク鳴っている。

「…浅井さんは何で抱いてくれなかったわけ?」
「…考えなしな行動をとるなって、…怒られた。」
「ま、当然ね。でもいい男じゃないの、浅井さん。身体あげるって言ったらホイホイもらっちゃうのが男ってもんよー。身勝手だからね。」

 福島の言い方には妙なリアリティがあった。

「男の身体は重いって言われて、圭ちゃんに押し倒された。…いい、って…言ったのに、…それは、あたしを怖がらせたかっただけ、だったみたい。」

 『結局手を出してはくれなかった』と、玲菜は寂しそうに呟いた。美海の頭の中は、情報飽和で何から処理したらよいのかわからない状態だった。玲菜が圭介に迫ったこともそうだが、玲菜を押し倒したとはどういうことなのか。結局手を出さなかったときの圭介の気持ちを考え始めたら、もう思考がどこにもたどり着かない。

「ま、浅井さんとしては、男という生き物にそういう隙を与えると簡単にこういう状態に追い込まれて、逃げられなくなるよってことを教えようとしてくれたんでしょうね。」

 優しい眼差しを玲菜に向けながら、福島は一度カフェラテを啜ってから口を開いた。

「傷ついたのは、玲菜ちゃんだけじゃないかもね。」
「…なんで?」
「まぁ憶測の域を出ないけどね。さ、冷める前に食べないと。」

 半泣き状態になっていた玲菜を慰めながら食事をし、玲菜の愚痴をしこたま聞いて、気付けば7時を過ぎていた。女子のトークの終わりはいつだって見えない。