「お…お風呂、ありがとうございました。」
「…うん。」

 視線を彷徨わせて、しかし座る場所もそこしかなく、圭介の隣に腰を下ろした。

「髪、濡れてる。」
「圭介くんも、ですね。」
「乾かそっか?」
「ドライヤー、持ってきてます。コンセント、お借りしてもいいですか?」
「乾かすよ。貸して?」
「え…でも…。」
「美海は座ってて。」

 半ば強引に取られたドライヤー。髪に触れる手は優しくて、ずっとこうしていてほしいと思ってしまう。

「慣れてますね。」
「春姉とか日和のやつ、やったことがあるからね。」
「仲がいいですね、やっぱり。」
「自主的にやってたわけじゃないよ。」
「それでも、嫌って言わないんですよね。」
「嫌だって言っても、どうしようもない人達だからね。」
「…でも、気持ちいいですよ。」
「…それなら、いいんだけど。」

 髪が乾かし終わって、圭介が再び美海の隣に座った。そっと頭を横に抱かれ、圭介の肩に頭を乗せた。

「圭介…くん?」
「…美海の芯がしっかりしてることは知ってたけど、…まさかここまでとは。」
「え?」

 より強く頭を押さえられて身動きが取れない。

「…俺のほうがびびってる。でも、触りたい。」
「…わ、私もドキドキしてます。」
「…そう、見えないんだけど。」
「それを言うなら…圭介くんだっていつも通りに見えますよ。」
「どこが。…震えてる。」

 頬に伸びてきた手が確かに震えていた。その震える手に、ゆっくりと手を重ねた。

「…圭介くんも、こんな風になっちゃうことがあるんですね。」
「…そりゃなるって。俺は超人じゃない。」
「私にとっては超人ですよ。だから…なんか不思議な感じです。でも、少し、嬉しい…です。」
「嬉しい?なんで?」
「…大事にされてるなぁって思えるからです。圭介くんがいつも私を優先してくれるから、私はいつだって安心して傍にいられる。でも、圭介くんの気持ちを優先させる時があってもいいのにってずっと思っていました。…だから、離したくないって言われたとき…あの、もちろん緊張したんですけど…嬉しかったです、私。」
「……我慢…限界。」
「え、あ、…きゃっ!」

 ふわりと身体が浮かんだ。そしてゆっくり下りた先は、圭介のベッドの上だった。