そんな素っ気ないメールでも、ちゃんと皇汰の頭の隅には、私を送るという義務は入っているらしい。


『もう帰ってる』

私もそう簡単な嘘をメールすると、また胸元に締まった。


「あんたも巨乳が好き?」

「え? えー……。どうだろ。俺、あんま肉は好きじゃないしなー」


「肉!」


そんな言い方にケラケラ笑いながら空を見上げる。


すっかり暗くなっていた。

困った。今から痴漢が出る道を帰らなければいけないのに。



「もうちょっと慰めてよ」


「うーーん。よく分からないけど、慰めたら皇汰くんを諦めちゃうの?」


ずいっと猫の目に見つめられたら答えられない。


「たった数十分で諦めれたら諦めてるよ」


でも人生はそんなに簡単じゃないらしい。

皇汰から来る着信に胸が踊るので電源を切ってしまった。




明日の朝になれば、忘れられる気持ちなら、同じアパートに侵入しようと思わなかったよ。