重いマフラーの吹かす音が聞こえる方を振り返ったら、バイクの後ろに跨がった皇汰が颯爽とヘルメットを外していた。


「あれ。二人とも意外と早かったねー」


バイクを運転している人はヘルメットを脱がないから顔は分からないけど、皇汰のヘルメットを受け取りながらムスッと喋った。


「みかどに心配かけんなよ」

「分かってるよ。うるせーな」


「お前」

「岳リン、葵に会っていく?」


ヘルメットの人と皇汰の険悪な雰囲気も気にせずに葉瀬川さんという人はまた、葵の名前を出す。


葵――……。

「俺に会ったらプレッシャー感じるんじゃねぇの?」


「じゃあ千景女史の実習姿でも」


「興味ねぇよ。今から幼稚園でみかどの部分保育だ」