月光の下





「あ、あの……名前」



さっき呼んだよね?
私の事を下の名前で……。




「何度呼んでも返事がなかったから……」


「……」


「ボーっとすんなよ」



名前、初めて呼んでくれた……。



久しぶりに呼ばれた。
自分の名前を。





「っ……」



嬉しさでいっぱいになって、自然と涙が溢れてきた。





「ちょっ……何で、泣くんだよ……」


「ご、ごめんなさいっ……。嬉しくて……」



当然ながら、一宮さんは慌ててる。





「笑ったり、泣いたり、忙しい奴だな」


一宮さんの指先が頬に触れた。
涙がそっと丁寧に拭われた。



その手は、殺し屋とは思えない程温かかった。