『へるぷ』






「なによ今さら。中学のときからずっとだもん、もう慣れてるわ」


「ああ、そっか。一緒に居てくれる彼氏もいないもんな」


「ちょっと、それが駆けつけてもらった相手に言うセリフ?」



ずきりと胸の奥が痛んだ。


気付かれないように、あたしは笑顔を浮かべて晃汰を肘で小突く。


晃汰がごめんごめんと謝りながら、真っ暗な外へすいっと視線を向けた。



「……でも夜中に呼び出したのは悪かったな。


おかげで、だいぶすっきりしてきた」



あたしは胸がむかむかしてきてる。


ケーキのごみでいっぱいになったビニール袋を見て、あたしはコーヒーと一緒にムカつきを飲み込んだ。



「水野さんのこと、大丈夫?」


「うん……まあ確かに、高校時代からずっと片想いしてる人がいるなら、俺に勝ち目なんかないからな」


「それ、あたしが言ったことまんまですけど」


「そうだっけ?じゃあ、海咲の解釈が効いたんだな」



ケーキのごみを捨てて、晃汰がふにゃりと笑った。


半分嬉しくて、半分切ない。


少しは晃汰の助けになれたみたいだから。


でも、晃汰が水野さんに振られて、ほっとしている自分がいるから、素直に喜べない。


晃汰は、こんなずるいあたしに気付いているのかな。



「あー、どっかに俺と付き合ってくれる人いねえかなー」



ぼやきながら晃汰が寝転がった。


あたしはごみを片付けながらさりげなく晃汰に背を向けた。


泣きそうになってるのが分かるから。


今晃汰と目があったら、間違いなく泣いてしまう。