「うう……ぐすっ……」
「お菓子のストック、まだあるの?」
「れいぞ、っに、ケーキ」
「え、食べるの?」
晃汰が無言でうなずいた。
テーブルの上には食べ終えたケーキたちの残骸が並んでいる。
もう10個以上は平らげているのに。
こんなに食べて身体に響かないのだろうか。
いや、いいんだ、こいつはもっとカロリーを摂取すべきだ。
自分より細いウエストを睨んでから、あたしはケーキを取りにキッチンへ向かった。
初めて失恋を経験したとき、晃汰はうっぷんを晴らそうとコンビニのケーキをむしゃむしゃ食べた。
あたしも付き合わされた。
それ以来、決まってこんな風にケーキに頼る。
失恋するたびに数が増えているような気がするけど、突っ込まないでおく。
ロールケーキとシフォンケーキを出したついでに、コーヒーを淹れてあげた。
テーブルに置くと、膝を抱えて泣いていた晃汰が顔をあげた。
目は真っ赤に腫れている、明日辛いだろうな。
「はい、どうぞ」
「……ありがとう、海咲」
晃汰は力なく笑って、プラスチックの小さなフォークを持った。
シフォンケーキを大きく切り分け、3口で食べてしまう。
こんだけ食べるのに、あたしより食べるのに、あたしより痩せているのって不公平。
夜中にケーキはさすがに厳しすぎるので、あたしはコーヒーをすすった。


