何も覚えていない様子の高広を連れて、学校に戻った私は、すぐに屋上に向かった。


屋上に出ると、美雪の遺体があった場所にうずくまる翔太の姿。


「明日香……俺、どうかしたのかな? ずっとここにいただけなのに、胸が張り裂けそうなほど悲しいんだ。ほら、涙が出てるだろ?」


抱きしめていた美雪の遺体はそこにはない。


それどころか、血塗れになって抱きしめていた、翔太の制服にも血など付着していなかったのだ。


「それは……おかしくなんかないよ。一番大切な人を失ったんだから、悲しくないはずがないよ」


大好きな人が死んでしまって、それだけじゃなく存在まで忘れてしまって。


本当の意味で失ってしまったんだから。
でも、これでやっと理解できたよ。











「赤い人」のお墓に向かった人は……皆死んだ。











私が見た光の柱に導かれて、消えてしまったんだと。


翔太には、どうして悲しいのか、その意味はわからないだろう。


高広にも何があったのかわからない。


私だけが、この悲しい想いを覚えているんだ。


そう考えると……恐ろしく孤独を感じる。


どうせなら、私も忘れてしまった方がどれだけ楽だったかと。


翔太の隣に腰を下ろして、私は少し泣いた。


しばらく泣いて、家に帰ろうという事になり生徒玄関にやってきた。