始めに聞こえたのは、修平の声。





「佐久間は、なんでひなたのことが好きなの?」




ドクンと胸が脈打った。




話してるのは…私のこと?






それに佐久間君はこう答える。





「…体育祭で、
 庇ってた足のことを気づいてくれたのがひなた先輩で。

 優しい先輩の姿を実感して、好きになりました。


 …美人で優しいってところだけじゃなくて
 少し抜けてるところも、笑顔も、全部が好きです。」







そこで私は、違和感を覚えた。




…私に話してたことと、違う?




気づいたそれは確かなものだった。




前に佐久間君は"一目惚れ"だと言っていたけれど、

それは違ったのだろうか。





私は必死に前の記憶を辿った。


体育祭…
男の子を助けた…




…でも、どんなに頑張って思い出そうとしたところで、
無理だと諦めてしまった。




体育祭で怪我人や熱中症のこは多くでて

私はそういう子を見つけるたびに保健室へと送っていたのだ。





その日は、
バカな私はジャージに印であるリボンをつけ忘れたが、
一応保険委員だから。





その中の一人だと思われる佐久間君を思い出すことは、

恐らくできないと判断した。




…だって、もともと記憶力も悪いし。