【あとがき 『青年の主張』】


こんな長いの読んでくださって、本当にありがとうございました。



この場を借りてコウの障害についてお話しようと思います。

本編では聴覚過敏の障害と発達障害とだけ書いてきました。

たくさんの人の目に触れる可能性があるので、診断名や障害名についてはできるだけオブラートに包もうと決めたからです。

というのは、この作品で読者がまちがった捉え方をする恐れがあり、そうなってしまってはまったく私の意に反するからです。

なのであえてはっきりとした障害名は最後まで書きません。

ご容赦ください。

さて、コウには生まれつき脳の機能障害があり、できることとできないことの差が激しいのです。

特に、コミュニケーション能力が弱く、それゆえに言語能力も低い。

冒頭部分で、ケンの言った言葉をオウム返ししてしまうのはそのためです。

一方記憶力は普通の人よりも高く、一度インプットしたものは抜けません。

ケンのピアノを数回聴いただけで弾けてしまうのはこのためです。

この作品を通してこういう障害を持つ人が世の中にいるということがわかっていただけただけたら、私は満足です。