「どこへ行きたい?」

島野は穏やかに笑いかけた。

「私、赤ちゃんを産むの。暖かいところがいいわ。赤ちゃんが健やかに育つようなそんなところ、ないかしら」

冴子は無邪気に笑って見せた。




もう後戻りはできない。

二人は十字架を背負ってしまったという罪の重さをこのときはまだよくわかっていなかった。