「……おかえり…なさい」



振り絞った声に、顔が熱を帯びてくる。


おいおい、なんなんだ…。


ばくばくという心臓。
熱い風が吹く耳。

叫びたくなるような可愛さに、身悶えしたくなる。


が、瑠璃に下半身を抱き締められてるため。

振り向いてキスをすることも、なんにもできない。



「…お、お兄ちゃんが…歌月が喜ぶから、やれって、その…今度の小説は、新婚を書くから、あの…」


ボソボソと言い訳をする。


最近瑠璃、コミュ障増してないか?

伊織の差し金か、アイツ殺しておこう。


そっと、瑠璃の細い腕が離れる。


瑠璃を視界に入れると、真っ赤で。

白に赤は映えるなあ、なんて思った。


「ど…だった?」


嫌だよね迷惑だよねごめんなさいというように。



あの過剰反応は、たぶん『帰ってきたからこれをしなくちゃいけない』とぐるぐる考えてた上での結果だろう。

いきなり、仕掛けなくちゃいけない側の自分が仕掛けられた。

意識してたから余計に恥ずかしさが上乗せされ、ソファに顔を埋めた――…