「歌月のせぇ…」


まだ顔がソファについている。

ソファ羨ましいなあ、なんてバカなこと考えてる俺。


「なんでかな」


「…?」

「なんで俺だと恥ずかしいの?」

「っ…」

「俺のこと好きだから?」

「……うるさい」


パタパタと足だけが動く。

予想通りの照れ隠しに、にやけが止まらない


なんなんだ、この子は。


俺を惹き付けて離さない。離れない彼女。



「手、洗ってくる」



洗面所に向かう。

蛇口を捻り手を濡らしていると、ドタドタと言う音がした。



「っ…」




瑠璃が、背後に、ふわりと。



「な、に…」



瑠璃が、後ろから抱きついてきた。


まだ顔が赤い。


勇気を絞りましたっ!というような、瑠璃にはあり得ない行動。



「どうしたの…」



「……」


きゅう、と抱きついてくる。

髪が俺の方まで舞って、また瑠璃の方へ戻ってく。