「…ねぇ、瑠璃」


あのな。

お前、確か大学では成績いいんだろ。

ならなんで、



「…バカなの?」



おかしすぎる。




瑠璃は、別れての言葉とは矛盾していて。




しっかりと、俺のスーツを掴んでた。


「…ぁ」


無表情をちょっと変えて、恥ずかしそうに手を引っ込める。



騙されてるとわかっていない瑠璃は、それでも覚悟を決めて。


「……飯塚、さん」


ボソッと、話始めた。

別れ話は続行に決めたらしい。


「……かわいかった」


「はあ?」


顔をそっぽに向けて、見られないようにしながら。

意味わかんないことをいう。



「…髪の毛、ふわふわで。茶色で。笑ってた」



感情のない声はいつものことなのに。

こんなに冷たい音なんて知らない。



――全部瑠璃にないもの。


否、そう本人が思い込んでるもの。