…そうまでする理由が瑠璃にはあったのだ。

何かしらの理由が。


高熱の体に鞭うつ理由が…



彼女の大切なものを浮かべてみる。

――大学?

いや、試験まではまだあるし、瑠璃は秀才だし。

――友人関係?

少ないけどいないわけじゃない瑠璃の友達に何かあったとか?

いや、瑠璃の友達は把握してる。

それに、瑠璃も俺に連絡してくるだろう。


――俺?


自惚れても、いいだろうか。

一応夫だし。


瑠璃は俺のために危ない橋を渡ったのか?


なら、なんで?

俺危ない橋渡らせるようなことしてないし…



とにかく。


「…伊織、落ち着け。体は大丈夫か?」


今は伊織の心配をしなくちゃ。


『ぅう…あ、ああ…なんともない…』

「なん分くらい寝てた?」

『…30分か?』

「薬の種類とかわかる?」

『…わかんね。あ、でもたぶんコーヒーに混ぜて…』


匂いがキツいものか。


なら、きっとあの瓶。

比較的強くないが匂いはキツいやつ。