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…薬は効いたみたいだ。


こんこんと眠るお兄ちゃんの白髪を軽くなで、確認する。

よし熟睡。

コーヒーに混ぜれば睡眠薬の匂いは消える。


「…ごめんねお兄ちゃん」


無関係とはいえ巻き込んでしまった。

それに、歌月のいいつけを破って薬品棚を触ってしまった。


ああ、悪い子だ私。


嫌われちゃうかもしれないと思い、かぶりをふる。



――ううん、とっくに。


私は歌月に嫌われてるもの。



厚手のコートを着こんで、目立つ白髪を隠すようにニット帽を被る。

こうして久しぶりに私は駕籠から出たのだ。