我妻はかごの中の鳥



「あっれぇ?誰ですかこの人」

「…わ、たしの本当の方の兄です…」


「ああ…どうも。私、笹田ともうしまして、鈴花のマネージャーです」


手を差し伸べてきたから、俺も握り返す。

弥生のマネージャーか。

弥生大好きな瑠璃は、しょっちゅう弥生のイベントなどについていく。

そのときにマネージャーと知り合ったとしても、なんら可笑しいことはないだろう。

弥生も瑠璃が大好きなんだし。


マネージャーがしきりに瑠璃を妹と言っているのは、たぶん弥生が瑠璃大好きなあまり“妹”にしてるからだろう。

女の子達よ、彼が本物のマネージャーだよ。


「妹さん、こっち来ます?あいつの緊張ほぐしてやって下さいな」

しばし迷ってから、こくんと頷き笹田さんについていく。

正直、ちょっとだけ助かった。

人込みに酔いそうだったから、離れたかったんだ。


特設ステージの裏側、“関係者以外立ち入り禁止”と書かれた空間の扉を開けると、スタッフルームが連なる廊下に出る。

更衣室などを通りすぎた一番奥の白い扉に、笹田さんはノックをする。

“桐生鈴花”とプレートがかかっている。