北見さんの吐息がかすかにかかったせいで、カーッと熱を帯びる耳。 それが顔全体に広がっていく。 振り返るのも恥ずかしいくらいに真っ赤な顔。 鏡を見なくても分かるほどだった。 頷くだけで精一杯。 北見さんは腕の力を一瞬だけ強めた後、私をパッと解放した。 「いってきます……」 振り向きもせずボソボソと告げて、事務所のドアを開いた。